「目標って、結局何なわけ?」

最近のあたしは、放課後になるとほぼ毎日のように職員室に通っている。

担任の柴崎先生に英語を聞いたあと、数学の問題集を持って冴島先生の元に行くと、彼が傍に座って熱心に説明を聞くあたしに問いかけてきた。

「それは、秘密です」

少し考えてから答えると、冴島先生が訝しげにあたしを見てから「ふぅん」と答える。

「ありがとうございました」

わからない問題を一通り質問し終わって立ち上がると、ふと傍に誰かの気配を感じた。

いつからいたのか、萌菜があたしの後ろに立っている。

「紗幸希、いたんだ。最近、熱心だね」

振り返ったあたしに、萌菜が少し複雑そうな表情で笑いかけてくる。

「あぁ、うん」

頷くと、萌菜が肩で軽くあたしを押しやるようにして冴島先生の前に進み出てきた。

「あの、先生。あたしもわかんないとこあって。聞いてもいいですか?」
「あぁ、いいよ。じゃぁな、宮坂」

萌菜を見上げて頷いた冴島先生が、そのあとあたしにちらっと視線を向ける。