「あ、金木犀」

秋だから、学校に植えられた木がどこかで花を咲かせているのだろうか。

漂ってきたその甘い香りに誘われて視線を動かすと、校門から校舎までの間の道に立てられている創立何十周年だかの碑の横に並ぶ木の中に、それらしき花をつけた低木を発見した。

一本しかないにも関わらず、白っぽい小さな花をつけたその木は、甘い香りを辺りに充満させている。

いつから咲いているんだろう。いつも通っているのに気がつかなかった。

甘い香りを漂わせるその木を見ていると、冴島先生がそれに視線を向けながら口を開いた。

「あぁ、似てるけど違うよ。花の色が白いだろ。あれは、銀木犀」

銀木犀……?

あまり聞き覚えのない名前に、小さく首を傾げる。

それにしても。

「へぇ。花の名前とか知ってるなんて意外」