職員室を出たあと、ゆっくりと廊下を歩いて昇降口に向かう。

ダラダラと靴を履き替えて外に出ると、ちょうど教職員用の出入り口から冴島先生が出てくるのが見えた。

昇降口から出たところで立ち止まっていると、教職員用の出入り口の前で靴を履き馴らしていた冴島先生があたしの存在に気付いて声をかけてくる。

「宮坂。お前、まだいたのか。俺と同じタイミングで出てくんなよ」
「それはこっちのセリフです」

思わず言い返すと、冴島先生がクッと声をたてて笑った。

それから、あたしをその場に置いて一人で校門に向かってさっさと歩き出す。

その後ろを早足で追っていくと、先を歩いていた冴島先生が立ち止まって振り返った。

「方角同じだし、やっぱり一緒に帰るか?」
「別に、あたしはそんなつもりありません」

からかうような口調で訊ねてくる冴島先生を軽く睨むと、彼が楽しそうにククッと笑う。

その笑い方に不快感を覚えて眉を寄せたとき、ふとどこからか漂ってきた甘い香りがあたしの鼻孔をくすぐった。