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心地のいい風が、窓から吹き込んでくる。
住宅街の上の高台にあるあたし達の高校は、教室からの眺めがいい。天気がいい空気の澄んだ日は、かなり遠くのほうだけど隣の県の比較的名前の知れた山も見える。
窓際の亜未のひとつ前の席を借りてぼんやりと外を眺めていると、さっきまで昨日のドラマの話をしていた亜未が机の中をごそごそと探り出した。
「あ。次の授業、大ちゃんの数Ⅱだ。真面目に聞こうっと」
亜未は机の中から数学Ⅱの問題集とノートを取り出すと、ノートをパラパラとめくってその中身をあたしに見せてきた。
「大ちゃんの授業はしっかり予習済み」
亜未が自慢げににこっと笑う。
「冴島先生の授業だけ予習したって意味ないじゃん。受験生なんだから、他の科目もちゃんと勉強しなよ」
「わかってるけど、何から手つければいいかわかんないんだもん」
あきれ顔のあたしを見上げ、亜未が少しふてくされた顔をする。