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保健室でほぼ寝て過ごした翌日。教室に入る手前で、上原くんと話している涼太と目が合った。その瞬間、涼太の唇が何か言いたげに小さく動く。
あたしは何か言われる前に彼から視線をそらすと、急ぎ足で教室に入った。
教室に入ると、既に登校していた亜未が自分の席に座っていた。
あたしの姿を見つけると、いつも笑って歩み寄ってきていた亜未。
だけど彼女はあたしからさり気なく視線をそらして、これまではあまり話していなかった女子のグループに話しかけにいった。
しばらくして、上原くんと涼太が教室に入ってきた。
亜未は彼らを気にするようにちらっと見ていたけれど、これまでのように話しかけたりはせずに、どこかよそよそしい態度をとっていた。
あたしと亜未と涼太。それからときどき上原くん。
あたし達4人は、クラスの中でもよく話をするほうだったのに。日が経つにつれて、今まで仲がよかったことが嘘みたいによそよそしくなっていった。
あたしと涼太だけでなく、あたしと亜未、亜未と涼太との関係までがおかしいから、心配した上原くんが一度あたしに話しかけてきた。
「宮坂さん、武田さんと涼太と何かあった?」
その問いかけに、あたしはただ黙って首を横に振ることしかできなかった。
みんなの関係を壊すキッカケを作ってしまったのは、間違いなくあたしだから。