彼は教育実習中に教室の黒板にパソコンのメールアドレスを書き残して、女子高生相手に「気軽に連絡して」なんて言ってたような人だ。
真相はわからないけれど、彼にはあたし達の同級生の里見萌菜と付き合っているらしいという噂もあった。
そんないい加減な人に、高校3年生の副担任が務まるはずがない。
どうしてみんなそのことに気づかないんだろう。
盛り上がるクラスメイト達を冷ややかな目で眺めていると、不意に冴島先生と目が合った。
できるだけ関わりたくない。
眉をしかめて顔をそむけようとしたとき、冴島先生が口元をふっと緩めて少し笑った。
それがあたしを嘲笑ったように見えて、なんだか気分が悪かった。
この先永遠に、あたしの中で彼の印象がよくなることはない。そう思いながら、今度こそ彼から顔をそむけた。