しばらくの沈黙のあと、つま先を見つめるあたしの頭に何かがふわりとのった。

大きくてやや骨ばった感触のそれが、本当に一瞬だけあたしの頭をくしゃりと撫でる。

「そっか」

ぽつりと、頭上から低い声が落ちてくる。

その声音は、穏やかでとても優しかった。

顔を上げると、先に歩き出した冴島先生の背中が見えた。

あたしを置いて歩き去って行くその背中は、もうそれ以上何も言ってはこなかった。