「じゃぁ、今度は俺から訊いていい?」
口元に小さな笑みを残したまま、冴島先生が軽く首を横に傾ける。
あたしが首を縦に振ろうが横に振ろうが関係なく、きっと彼は次に用意した言葉を投げかけてくる。
それがわかっていて黙っていると、彼がゆっくりと口を開いた。
「後悔しねぇの?」
冴島先生が、真っ直ぐにあたしの目を見据える。
何に対する後悔か……
2年前の寒い冬の日。あたしが彼に投げかけた言葉を思い返せば、それはすぐにわかる。
あたしは数秒彼の目を見返したあと、すぐに視線を床に落とした。
「あたしは、わかりません」
はっきりと肯定することも否定することもできず、自分の上履きの先を見つめながら軽く唇を噛む。