「当時は俺も夢とかなかったけど、その先生見てるうちに教師やってみようかなって気になった」

そう言った冴島先生の表情は生き生きとしていて、何だか楽しそうだった。

そういえば、美容師になりたいと自分の夢を口にするときの涼太も、こんなふうに生き生きして楽しそうだった。

涼太が楽しそうに夢の話をしたときは訳もなく無性に腹が立ったけれど、今冴島先生の話を聞いているあたしは、生き生きとして楽しそうな彼のことを素直に羨ましいと思う。

自分が教師になりたいと思った理由を楽しそうに語れる冴島先生も、それから彼が話す高校時代の先生のことも。

冴島先生の横顔をじっと見上げていると、彼が苦笑いを浮かべながらあたしに振り向いた。

「あぁ、やっぱ宮坂にしてみれば理由がいい加減?」
「そんなことないです」

少し間を空けてからそう答えると、冴島先生が優しげで穏やかな笑みを浮かべる。

その笑みが、あたしの胸の奥を小さく震わせた。