布団を被っているあたしの向こうで、沈黙が続く。

ふたりがどうしているのか気になり始めたとき、ようやく冴島先生の声がした。

「お前の気持ちもわかるけど。ちょっとは待ってやることも大事なんじゃない?」

冴島先生の言葉に、涼太は何も応えない。

それから少しして、床が上履きを擦るような音が遠ざかっていった。

涼太がいなくなった────?

そう思ってほんの少し布団から頭を出したとき、傍で誰かがふっと鼻で息をつくように笑った。

「木瀬なら、今出てった」

布団から顔を出したあたしと目が合った冴島先生が、呆れた顔で腕を組む。

「で、どうする? まだ寝とくのか?」

じっと黙っていると、冴島先生が小さくため息をつく。

「まぁ、好きにすれば? あと少し保健室空けといてもらうように頼んどくから。あ、帰るときは一応俺か柴崎先生に声かけて。職員室にいるから」

冴島先生はそう言うと、養護教諭と何言か言葉を交わして保健室から出て行った。