「大ちゃん、どうかしたの?」
「あー、柴崎先生から保健室に行って様子見てきてほしいって頼まれたから。宮坂は?」

涼太と冴島先生の会話が布団越しに聞こえてくる。

「声かけてみたけど、無反応。サユ、起きろよ」

涼太に引っ張られて、布団が少しずれる。

「あー、木瀬。ちょっと待て」

顔が見られないようにぐっと内側から引っ張って抵抗すると、冴島先生の声がした。

その声で、布団を引っ張ろうとしていた涼太の動きが止まる。

「寝てるんだから、無理やりはやめとけ」
「別に無理やりじゃないよ。サユ、絶対本気で寝てないし」
「でも、木瀬がここにいると、宮坂は起き上がれねぇのかも」
「何だよ、それ。大ちゃん、どういう意味?」

涼太が怪訝そうな声で、冴島先生に突っかかる。

誰かに不満そうに突っかかっている涼太の声を聞くのは初めてだった。