「熱はないみたいだけど、ずっと顔色が悪いわね」

保健室のベッドで蹲っていると、若い女性の養護教諭が心配そうにあたしの様子を何度も見にきてくれた。

その度に、彼女に小さく頷いて、薄い布団を頭の上まですっぽりと被る。

少なくとも今日一日だけ。今日一日だけは、教室にいたくない。涼太の顔も亜未の顔も見たくない。

そうしている間に授業は終わり、気付けば放課後になっていた。

「宮坂さん、そろそろ放課後だけどどうする? もし一人で帰れそうにないなら、親御さんに連絡をとるけれど……」

養護教諭がベッドの周りを覆うカーテンを開きながらそう言ったとき、保健室のドアが開いた。

その音に反応して、彼女がカーテンに手をかけたまま振り返る。

「どうかしたの? そろそろ、保健室閉めるけど……」