「────坂、宮坂?」

大きなごつごつとした手に肩を揺すられて、はっとする。

顔を上げると、心配そうに眉根を寄せた担任の柴崎先生が目の前に立っていた。

「宮坂、大丈夫か? あてても返事をしないし、それにさっきから顔色が悪いぞ」
「え……」

辺りを見渡すと、クラスメート達がみんな不審そうな目であたしのことを見ていた。

黒板に書かれているのは、英語の長文。

黒板の上の掛け時計を見ると、柴崎先生の英語の授業が始まってもう20分は過ぎているというのに、あたしは英語の教科書もノートも開いていなかった。

「あの、すみません」

柴崎先生に謝りながら、慌てて教科書を開く。

焦って手を動かすと、机の端っこに置いていた筆箱に肘が当たった。それがそのまま落下し、しっかりと蓋をしていなかったせいで中身が床に散らばる。

「すみません」

もう一度謝って、床に散らばった筆箱の中身をひとつずつ拾い集めていると、柴崎先生があたしの頭上で小さくため息をついた。