だけど、少し頭を下げるようにして副担任の「冴島」という人物が教室に入ってきた瞬間、クラス中が一気に沸いた。

「え? 大ちゃん!?」

切れ長の目に、すっと通った鼻筋。薄い唇。明らかに実習のために染めたことがわかる不自然な黒さだった髪は、多少ナチュラルな色になっていたけれど、毛先は相変わらずゆるくセットしてあったし、横に流してある前髪は目にかかるくらい長かった。

新任の先生というよりは、母校にふらりと立ち寄った大学生みたいな風貌のその人物は、まぎれもなく冴島 大輔だった。

「大ちゃん、ほんとに先生になったんだ?」

まさかの冴島大輔の出現に、興奮したクラスメイト達が思い思いに声をかける。

柴崎先生はざわついた生徒たちをいったん静かにさせると、穏やかな笑みを浮かべながら冴島大輔を紹介した。

「全員知っていると思うが……今年からこの高校に配属になった、3年5組の副担任で、数学担当の冴島大輔先生だ」