「香川くん、紗幸希ちゃんのことが好きなんだって。前から気になってたけど、最近よく話をするようになって、ほんとにあんたのことが好きになったって。今まであたしに協力するふりをして、こっそり香川くんと仲良くなってたの? ひどいよ。紗幸希ちゃんの裏切り者!」
ミワはそう言ってしばらくあたしを睨んだあと、しゃくりあげるようにして泣き出した。
「ほんとに、ひどいよ。紗幸希ちゃん」
ミワの肩を抱いている友人も、もう一人の友人も、彼女を憐れむように投げかけたあとにあたしに冷ややかな眼差しを向けてくる。
「ちょっと待って……」
だけどあたしには、彼女達に『裏切り者』扱いされる意味がさっぱりわからなかった。
ミワから香川くんが好きだということを聞いてから、彼女の恋を応援する意味で彼と話す機会ができたのは確かだ。
だけど必要以上に彼と話したことはないし、たまにふたりで会話を交わすとしても挨拶程度で。決して香川くんと『こっそり仲よく』なんてなっていない。