「今日は香川くんとね────」
あたしは、ミワが香川くんと話したことや、彼と関わった些細なできごとを教えてくれるのをいつも微笑ましい気持ちで聞いていた。
そんなミワが香川くんに想いを伝えると決めたのは、中学3年の秋。
ミワは体育祭が終わったあとに告白するつもりだと、あたし達に決意表明してきた。
「頑張ってね」
体育祭の日。香川くんを呼び出したというミワの背中をみんなで一緒に押し出して、結果報告を聞くのを楽しみにしながらそれぞれ帰宅した。
それまでにミワと香川くんとは頻繁に会話を交わすようになっていたから、あたしもみんなも、彼女の告白が絶対にうまくいくと思っていた。少しも疑ってなんていなかった。
だけど翌日学校に行くと、昨日一緒にミワの背中を押し出した友人達が、登校してきたあたしのことを冷ややかな目で見てきた。
何だかみんなの様子がいつもと違う。
そう思いながらも、いつものようにみんなの傍に歩み寄って「おはよう」と声をかける。
だけど、それに対して誰も「おはよう」と言葉を返してくれることはなかった。