「ふられたに決まってるでしょ。紗幸希のことが好きだから無理だって。はっきりそう言われた」

それに対して言葉を返すことができずに、息を飲み込む。

亜未の顔をまともに見ることができずに床に視線を落とすと、彼女が今まで聞いたことがないくらい低い声で問いかけてきた。

「文化祭の日、紗幸希は涼太に告白されてるんだよね?」

亜未の言葉に、あたしの身体が怯えるように小さく震える。

「ねぇ、紗幸希。どうしてあたしに何も言わないの? 本当はあたし、1年のときからずっと、もしかしたら紗幸希も涼太のことが好きなんじゃないかって思ってた。だから何度か確かめたよね? 『涼太のこと、本当はどう思ってる?』って」

確かにそうだ。亜未は涼太が好きだという想いを打ち明けてくれたとき、ちゃんとあたしの気持ちも訊こうとしてくれていた。

いつも涼太に素っ気無い態度ばかりとるあたしの気持ちを、何度も確かめてくれようとする気配があった。

だけど、いつも誤魔化して。涼太を何とも思っていないフリを続けてきたのはあたし。

だって、そうするのが一番いい方法だと思ってた。