けれど、亜未は無表情であたしを見ながら抑揚のない声で話しかけてきた。
「紗幸希、ちょっといいかな」
「う……、ん」
戸惑い気味に頷くと、亜未はすっとあたしに背を向けて早足で教室を出て行く。
あたしは戸惑いながらも、いつもと様子の違う亜未の後ろを慌てて追いかけた。
亜未はそのまま一度もあたしを振り返らずに歩き続けると、屋上に続く階段の手前で足を止めた。
あたしに背を向けたまま大きく深呼吸をした亜未が、そこでようやく後ろを振り返る。
振り返った亜未は、唇を固く横に引き結び半ば睨むようにしてあたしを見てきた。
「亜未……?」
「あたし、涼太に告白した」
あたしが名前を呼びかけるのとほぼ同時に、亜未も口を開く。
「うん。あいつ、何て?」
「聞かなくたって、わかってるくせに」
亜未がそう言いながら、恨めしそうにあたしを睨む。