もっと上原くんの雰囲気にあう友達が他にもいそうなのに。

並んで歩く涼太と上原くんを見る度に、あたしはいつもそう思う。

廊下で偶然会ってしまったあたし達4人は、仕方なく一緒に教室まで歩いた。

3年5組。それが、あたしの高校生活最後のクラス。担任は柴崎先生だ。

がっちりとした体つきの男の先生で、最初見たときは体育の先生かと思ったけど、担当教科は英語。

40代後半のベテランで、進路指導にも定評がある。

大学受験のこの年に、柴崎先生のクラスになったら当たり。毎年柴崎先生が担任をしたクラスは、9割が大学に現役合格している。

以前、先輩からそんな噂を聞いたことがある。

「この一年間、よろしくお願いします」

3年5組の教壇に立った柴崎先生は野太い声で簡潔に挨拶をすると、廊下に視線を向けた。

「それから、副担任を紹介します。冴島先生、入って」

柴崎先生がまだ姿の見えない副担任の名前を呼んだときは、あたしもクラスメイトたちも「冴島」という名前と一年ほど前この学校にいたその人とが合致しなかった。