「────!? なっ、どうして先生がこんなとこにいるんですか?」
あたしはしばらく絶句したあと、ほとんど悲鳴に近い声をあげた。
「どうしてって。先にここで煙草吸ってたのは俺だから。あとからやって来てギャーギャーわめいてたのはお前らのほう」
あたしに煙草の箱を見せた冴島先生が、その角をコンッと手摺に軽くぶつける。
「立ち聞きしてたってことですか?」
「だから、お前らがあとから来たんだって。俺が高校生のときはこの屋上も簡単に入れたのに。今は鍵がかかってて、教師でも簡単に持ち出せねぇんだよな。厳しい世の中だわ」
冴島先生が顔をしかめながら、ぶつぶつと文句を言う。
「そんなことはどうでもいいんです。結局、立ち聞きしてたんですよね?」
眉を寄せて睨むと、冴島先生はあたしを見下ろしてにやりと笑った。
「だって、出て行ける雰囲気でもなかったし」
「最低」
あたしは低い声で彼を罵ると、一刻も早くその場を立ち去るために足を一歩踏み出した。