「降りよう。教室の片付けが残ってる」
「あー、ちょっと待ってよ」

今上がってきたばかりの階段を下ろうと踵を返すあたしを、涼太が引き止める。

涼太はあたしの手首をつかんで引っ張ると、俯いて指先で額をかいた。

「何?」

怪訝な声で訊ねながら首を傾げると、涼太がちらっと視線を上げる。

辺りが薄暗くてはっきりとはわからなかったけれど、あたしの顔色を窺うように視線を上げた涼太の顔が少し赤くなっているような気がした。

「そんな不機嫌そうな声出すなよ。俺、ちょっとサユに言いたいことあって」
「言いたいこと?」

何をこんなところで改まって。

怪訝に思って首を傾げていると、涼太がズボンのポケットから何かを引っ張り出した。そして、それをあたしの前に差し出してくる。

「これ」

涼太がポケットから出してきたのは、文化祭のときに萌菜が撮ったポロライドカメラの写真だった。亜未や上原くんと4人で撮ったものではなく、萌菜に強引に撮らされた、涼太とのツーショットのほう。