「そっち、屋上でしょ? 鍵がかかってるんだから、行くだけ無駄だと思うんだけど」
そう言って涼太の手を振りほどこうとすると、彼が振り返って意味ありげに微笑んだ。
「そう、わかってるよ」
離れかけた手を握りなおして、涼太がさらに上へとあたしを引っ張っていく。
そして、屋上に続く最後の階段の手前にある踊り場で、ようやく足を止めた。
一気に2階分くらい階段を昇らされたあたしは、疲れて肩を落とした。
「疲れた……」
「情けねぇな。まだ若いのに」
肩で息をつくあたしを見て、涼太がケラケラと笑うのが少し憎らしい。
「うるさい。こんなとこまで上がらせて、何の用よ」
涼太に連れて来られた踊り場の天井には、細長い蛍光灯の電気がふたつ。どちらも電球切れなのか、チカチカと交互に点滅を繰り返している。
埃っぽいし、天井の蛍光灯の点滅に目の前が眩んでうっとうしいし、無駄にこんなところまであたしを連れてきた涼太は憎たらしいし。トータル的にいい気分がしない。