涼太とくだらない話をしながら、校舎内の階段を昇る。
3年生の教室がある3階まで階段を昇ってきたとき、ダラダラと隣を歩いていた涼太が不意にあたしの右手をつかんで引っ張った。
「サユ、ちょっと来て」
「来てって、どこに?」
涼太は困ったように笑うと、質問には答えずに、ただあたしの手を強く引いた。
そして、さらに上へと階段を昇っていく。それは屋上の入り口へと通じる階段だった。
けれど、3階までの階段と違って照明も暗く、あまり掃除されていないせいで埃っぽい。
あたし達の学校の屋上の入り口は安全のために常に鍵がかかっていて、生徒達はよほどの事情があるときだけしか入れない。それも、教師の許可を取ることが必須だ。
この階段を昇っても屋上に続く固い鉄の扉の前までたどり着くだけで、無駄な労力を使うだけ。それがわかっているから、生徒達のほとんどがこの階段には目もくれない。
だから、涼太が屋上に続く階段へとあたしを引っ張っていく意味が全くわからなかった。