「何やってんだか」

萌菜があたし達のやり取りを見て、呆れたように小さく息をつく。

「うちのクラスはこれで終わりだから、他のクラスの展示を適当に楽しんで────」
「あ、大ちゃん」

萌菜が呆れ顔であたし達を外へと促したとき、廊下にいた生徒が大きな声をあげた。

萌菜のクラスの展示が行われている教室の入り口付近で、外に出ようとしていたあたし達と中に入ろうとしていた冴島先生が鉢合わせる。

「あれ、大ちゃん。一人で文化祭回ってんの? すげぇ淋しくない?」

涼太が笑いながら言うと、冴島先生が心外そうに片眉を寄せた。

「一人で回ってるんじゃなくて、危険なことがないか見回ってんの」
「へぇ、なんか言い訳っぽい」

涼太がからかうように、ケラケラ笑う。

「うるせぇよ」

冴島先生は煩わしそうな表情を浮かべて涼太の頭を軽く小突くと、萌菜達の展示教室に足を踏み入れた。