萌菜の手の中にある写真には、涼太の隣で緊張気味の笑顔を浮かべる自分が写っている。

「どんなふうに撮れてんの? あ、綺麗に撮れてる」

涼太は萌菜の手から写真を受け取ると、満足気ににっこりと笑った。

「サユ、いる? 俺はどっちでもいいけど」

涼太が笑いながらあたしに写真を見せてくる。その様子を、亜未が彼の隣からじっと見ていた。

黒目をちらっとも動かさずにじっとこちらを見ている亜未と目が合って、涼太のほうに写真を押し返す。

「あたしはいいよ。萌菜が勝手に撮っただけだし。涼太がいるならもらえば」

素っ気無い声で言うと、涼太が少し不満気に唇を動かした。

「せっかく撮ってもらったのに、そういうこと言うなよ。サユがいらないなら、俺がもらうからな」
「だから、そう言ってる」

涼太はしばらくあたしのことを不満そうに見つめたあと、やがて諦めたように小さな写真を制服のポケットの中に突っ込んだ。