上原くんの声に促されて、あたし達は涼太を先頭にして歩き出す。

しばらく上原くんの影に隠れるようにしながら、緊張気味に歩いていると、先頭を歩いていた涼太が自然に亜未と並んで会話を始めた。

その姿にほっとして、あたしはようやく身体の緊張を解く。つい細い息をこぼすと、上原くんが隣でふっと吹き出した。

「宮坂さん、あのふたりといるとき、気ぃ遣い過ぎ。そういうの、去年からずっと変わらないよね。そこまでする必要ある?」

上原くんは片眉を下げながら苦笑いを浮かべたあと、ほとんど金色に近い涼太の頭の後ろを気の毒そうに見遣った。

「宮坂さんが武田さんに気ぃ遣ってるのって、あの子が友達だからって理由だけ?」

上原くんは直接核心を衝いてはこない。

だけど、問いかけてきた彼の言葉で、やっぱり全て見透かされているのだと確信できた。もちろんあたしの個人的事情を除いては、だけど。

おそらく上原くんは涼太のためにその個人的事情を知りたいのだと思うけれど、あたしはそれを話せない。

というよりも、話したくない。忘れたいから。