涼太とドア一枚隔てて離れたのに、あたしの鼓動はまだ、いつもの倍の速さで脈打っていた。
「あ、紗幸希かわいい」
「ほんとだ、いつもと雰囲気変わるね」
ドアにもたれかかっているあたしに気付いた亜未と上原くんが、近づいてきた。
「紗幸希、そろそろ当番代わるから行こう」
浴衣姿の亜未が、にこりと笑いかけてくる。
あたしがドアに寄りかかったまま動かずにいると、亜未が不審げに首を傾げながらあたしの手を引っ張った。
亜未に手をつかまれた瞬間、ドクンとひとつ鼓動が高鳴る。
さっき涼太に支えられて軽く抱きとめられたことを思い出すと、どうしようもなくいたたまれない気持ちになった。
「紗幸希? 行かないと」
亜未があたしの手を引いて、急かす。
涼太に触れたときの感覚と、首の後ろに感じたチリチリとした熱を思い出しながら、あたしは引き攣った顔で小さく頷いた。