40分程して、作業を終えた涼太が鏡越しにあたしを覗き見ながら満足気ににこっと笑う。
「崩れないように、ちょっとこれかけとくね」
涼太は机に置いてあるヘアスプレーを手に取ると、あたしの頭を軽く押さえながら全体的にそれを振りかけた。
「はい、できた。すげぇ可愛くない?」
涼太がそう言いながら、箱に入っていた赤色の花の髪飾りを挿してくれる。
鏡には、ゆるく巻いた髪をサイドに寄せてアップにした自分が映っている。
今日は亜未に言われて化粧もしているから、そこに映るあたしはまるで別人みたいだった。
「感想は?」
鏡を見ながら黙り込むあたしの両肩に、涼太が軽く手をのせる。そしてあたしの顔の横から顔を覗かせると、にこにこ笑いながら訊ねてきた。
「いい、と思う」
鏡から視線を落としてぼそりと答えると、にこにこと笑った涼太があたしの肩をぽんぽんっと軽く叩く。
「だろ。ていうか、サユだったら髪だけじゃなくて着付けもやってあげたのに」