「サユ、今何見てたの?」

嬉しそうに笑う涼太を、あたしは鏡越しにじろりと睨んだ。

「何も見てない。よそ見してないで、集中して。時間なくなるよ」

冷たい声でそう返すと、涼太が面白くなさそうに唇を尖らせてまた作業に戻る。

涼太に冷たい言葉を返したものの、あたしの鼓動はいつになくドキドキと鳴っていた。

作業に戻った涼太は、数秒でまたさっき同様真剣な表情になる。

その顔を鏡越しにこっそりと盗み見ながら、あたしはだんだんと速くなる鼓動を抑えるように、膝の上で手の平をぎゅっと思いきり握り締めた。