「いちいち訊いてこなくたっていいよ。実験台でしょ?」

素っ気無い声で答えると、涼太が呆れ顔でくすっと笑った。

「だから、実験ではないって」

涼太は笑いながらもう一度あたしの髪を撫でると、手にブラシを持ってそれで時間をかけて丁寧にあたしの髪を梳いた。

それから梳いた髪を少しずつ束にして留めると、大き目のカーラーで小分けにした束ごとに髪を巻いていく。

作業を始めた涼太は、無駄な話をするのをぴたりとやめた。

真剣な顔で作業を続ける涼太を、あたしは彼に気付かれないように鏡越しにじっと見つめる。

ときどき額にかかる髪をかきあげながら丁寧にあたしの髪に触れる涼太の顔は、今まで見たことがないくらい綺麗だった。

その顔にすっかり魅せられてしまい、涼太を食い入るように見つめていると、作業の手を一瞬休めた涼太と鏡越しに目が合った。

あたしがじっと見つめていることに気がついた涼太が、いつものように人懐っこい顔で嬉しそうににかっと笑う。