文化祭当日。亜未の髪を巻きなおして一まとめのアップにした涼太が、椅子に座って待っているあたしの隣に腰をおろした。

「じゃぁ、次はサユな」

和風喫茶の控え室としてひとつ借りている教室に、涼太は持ち運べる鏡とかアイロンとかヘアスプレーとか。そういうものを諸々と持ち込んでいた。

隣に座った涼太が、あたしの前に鏡を立てる。

「サユ、紺色似合うよな」

顔を近づけてきて一緒に目の前の鏡を覗き込んだ涼太が、あたしの髪を手の平で撫でながら笑った。

「そう?」

ストレートな涼太の褒め言葉に、あたしは鏡から顔を背けて、濃紺に大きめな赤い牡丹が散らばる浴衣に視線を落とした。

「サユ。いつも髪下ろしてるけど、今日はアップにしてもいい?」

あたしの髪を弄りながら、涼太が鏡越しに訊ねてくる。