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教育実習生の受け入れ期間が終わり、冴島大輔を初めとする実習生達が去った2週間後。
あたし達の学年で、ある噂が飛び交った。
「2年5組の里見萌菜が、大ちゃんと付き合ってるらしい」
その噂は、萌菜と比較的仲がよかったあたしの耳にも自然と入ってきた。ただし、萌菜本人の口からではなくたまに世間話を交わす程度の間柄のクラスメートの女子を通して。
その噂が広まってから、萌菜は学年中の女子達から少し冷ややかな目で見られるようになった。
だけど噂の真相がどうであれ、冷ややかな目で見られるべきなのは萌菜じゃなくて冴島大輔のほうだ、と。あたしはそう思っていた。
やっぱりあいつは、女子高生と仲良くなるのが目的で教育実習に来たらしい。
冴島大輔が去ったあと、あたしの彼の印象はさらに悪くなった。
萌菜自身は、学年に広まっているその噂を知っているのか知らないのか。女子からの冷ややかな視線を受けても、常に堂々としていた。
噂の真相がどうなのか、聞こうと思えば簡単に聞くことができたけれど、あたしは萌菜にわざわざ確認しようとは思わなかった。
萌菜は、言いたいことがあるときはこちらから訊ねなくても自分からちゃんと話をしてくれる。そういう子だったから。
萌菜と冴島大輔の噂はいつの間にか消えたけど、その真相は未だにわからない。
そもそもあたしは初めから、そんなことには興味がない。