「あ、サユは全部俺にお任せでいいだろ?」

涼太が亜未からあたしに視線を移す。

そう訊ねてきた涼太は、ハナからあたしに反論させるつもりなどないようだった。

「亜未には希望聞いてるのに? やっぱりあたしは実験台なんじゃない」

机に片肘をつきながら嫌味っぽくふっと息を吐くと、苦笑いを浮かべる涼太の顔が横目に見えた。

「そうじゃなくて。サユは俺の中でもうイメージがあんの」
「どんな?」

机に肘をついたまま視線だけを上に向けたとき、亜未が言った。

「涼太は紗幸希のことよく見てるもんね」

亜未の声はいつもと変わらず明るかったけど、涼太を見る目は切なげで、無理やり引き上げたみたいな唇の端は微かに引き攣っていた。

「いや、別にそういうんじゃなくて」

自分を見つめる亜未の目がどれだけ切なげな色をしているか。それに少しも気付いていない涼太が、困惑気味にちらりとあたしに視線を向ける。

あたしは切なげに笑う亜未の前で涼太のその視線をまともに受け止められず、何にも気付いていないようなふりをして教室の床に視線を落とした。