「文化祭に和風喫茶するのっていいよね。今年は勉強があったから夏祭りも花火大会も行けなかったし。浴衣着れるの、すごい楽しみ」

亜未があたしの机に手をつきながら嬉しそうに笑う。

さっきの話し合いで、あたし達のクラスの文化祭での出し物は和風喫茶に決まった。

カキ氷とかおだんごとか、そういうものを売るらしい。

女子が店番をやるときは『浴衣』で。誰が提案をしたのか忘れてしまったけれど、最終的にはそんな決定事項もできていた。

「あたしはここ数年浴衣着てないから、お母さんに頼んで箪笥から引っ張りださないと」

最後に着たのは中学1年生のときで、あたしはその柄どころか色すら覚えてない。

箪笥から引っ張り出す以前に、ちゃんととってあるのだろうか。

そう思っていたとき、不意に後ろから髪を撫でられる感触がして、ぞくりと肌が粟立った。

「サユの髪って綺麗だよな」

髪に触れたものを反射的に払いのけると、その手が誰かにつかまえられて、またぞくりとした。