「だから、何なんですか?」
「いや、別に。じゃぁな」

苛立った声で問いかけたあたしに、冴島先生がもう一度軽く手を振る。それから、煙草を咥えてその煙をふぅっと一息に吐き出すと、あたしに背を向けて暗闇の向こうへと歩いて行った。

冴島先生が吐き出した煙が暗がりの中で燻って、視界がぼやけて濁る。

「涼太が何なのよ」

少しずつ遠くなっていく冴島先生の影を睨みながら、小さくつぶやく。

何も知らないくせに、萌菜も冴島先生もおせっかいだ。

あたしのつぶやきは、誰もいない暗闇の中に吸い込まれて、静かに消えていった。