「今のセリフ、そっくりそのまま先生にお返しします」

冷たい声でそう言うと、冴島先生がクッと喉を鳴らすようにして笑った。

「今帰り?」
「予備校行ってたんで」
「ふぅん。遅くまでお疲れ。気をつけて帰れよ」

再び煙草を咥えた冴島先生が、眉間に皺を寄せているあたしに軽く手を振る。

「さようなら」

既に立ち去りかけている冴島先生に無愛想な挨拶をして、あたしも彼に背を向ける。

そのとき、「あぁ、そういえば」と、冴島先生が何か思い出したように後ろから呼び止めてきた。

「帰る途中、学校の最寄り駅で木瀬に会った。お前がいつ頃学校出たか気にしてたけど、知らねぇから知らねぇって言っといた」

立ち止まって振り返ると、暗闇の中で冴島先生がにやりと笑う。