帰り道に一服してるだけなら、特に警戒する必要もないだろう。

公園の入り口の前で煙草を吸っている若い男の背中を見ながら、小さく安堵の息をつく。

そのまま気付かれないように彼の後ろを通り過ぎようとしたとき、あたしの靴がカサリと乾いた音をたてて地面に擦れた。

その音に反応するように、後ろを向いていた男が煙草を咥えたままゆっくりと振り返る。

目が合うと、彼が咥えていた煙草を指で挟んで口から離し、「あぁ」と気怠げにつぶやいた。

「宮坂じゃん」
「どうも」

抑揚のない声で反応を返したあたしの眉間に、うっすらと皺が寄る。

彼が意味ありげににやりと笑みながら、指先を軽く動かして煙草の灰を地面に落とす。

「出会わないように気をつけろって言ったのに。面倒だから」

あたしに向かって文句を言いながら気怠げに息を吐いたその男は、冴島先生だった。