苦笑いを浮かべながらフォークを持って戻ると、冴島大輔はあたし達の班を離れて別のテーブルを回っていた。

教育実習の先生として来ているくせに、女子に話しかけられて嬉しそうにしているようにしか見えない冴島大輔に嫌悪感を覚える。

ほんと、チャラい。

あたしは班のテーブルに戻ると、椅子に座った。

試食の準備が整った班から、順番にできあがったグラタンを食べ始める。

「粉チーズかける?」

前の席に座っていた男子があたしに細くて小さな筒を差し出してきた。それを黙って受け取って、少しだけグラタンにふりかける。

ホワイトソースの上に、チーズの粒が粉雪みたいにさらさらと落ちていく。

今はまだ6月。夏が始まったばかりなのに、冬のある日に散らついていた雪のイメージが脳裏に思い浮かんだ。

寒い冬の日。公園の白いベンチに落ちていく、さらさらの粉雪。ベンチに置き去りにされた小箱。

あの冬の日のイメージに、あの人は絶対に重ならない────……。