警察に通報される可能性は無視できない。身元を隠すための武士になっているのに、警察ではそんなものが通用するはずがない。最初からちゃんと事情を説明して、頭を下げた方がいくらか確率も上がるというものだ。

 では最初がたまたまボクの家だったとしたら? そんな突飛な想像までして、やはり受け入れられずにいた。

 あまりにも都合がよ過ぎる展開だ。ボクがブシの親なら、やはりある程度、成功する見込みの相手に絞りたい。ボクの家の前に立てば、匿ってもらえるという確信があったというのか。

 ボクに関して、いや、ボクの家に関して全てを調べ上げていたという可能性。父親がしばらく不在で、かつ母親もいない。いるのはお気楽な大学生の息子だけ。バイトをしている様子もない。加え、今は夏休みだ。時間を持て余していることを想像するのは容易だ。