【いや~、もう、凄かった! ずぶ濡れだよ! お風呂に直行だった】

 気の毒なことに、やはり帰宅途中で豪雨に遭ってしまったらしい。

【稲妻が下から上へ昇るように走るところなんて初めて見たし、雨粒も大きくて重たくて痛かったし、何より周りに何もないから、暴風がまともに僕に当たって自転車が進まなくて、とにかく凄かった‼】

 文面から、少し興奮気味である事が伝わってきた。

【でも無事で良かった! 心配してたんだよ】

【お疲れー】

【無事に帰還できた軍人の気持ちが分かった気がする】

 いつものように他愛ない会話が続いていく。

 少し経って、佳くんが話題を変えた。

【そういえばさ、帰ってくる途中でポスターを見かけたんだよね。町の掲示板みたいな所?】

【なんのポスター?】

【高校演劇の夏の研究発表会だった。来週末だったかな。一緒に行かない?】


 演劇――


【行きたい! それ、毎年やってるやつだよ。私の母校の演劇部も参加してるはず。前に行ったことがあるんだけど、結構面白かったよ。あと担任だった先生が顧問をやってるから、久し振りに会いたいかも】

【悪い。来週末は家の手伝いが入ってるから俺はパス。二人で行ってこいよ】

【俊太は駄目なのか~。残念】

【悪いな、ホシケイ】

 俊太がごめんスタンプを送信した。用事があるのならば仕方がない。

【大丈夫。また近いうちに会おう!】

【おう、そうだな】

 俊太のその返信で、今回の会話は終了した。

 演劇観賞なんて久し振りだ。

 私は嬉しさのあまり、無意識にうちわを全力で扇いでしまった。

 そのせいで体温が上昇して暑くなってしまったけれど、今はそんな事はどうでもよかった。