よく分からない彼の行動に恐る恐る「どうしたの?」と問えば無言で差し出された大学ノート。



理解が追いつかずしばらく差し出されたそれを見つめた。



なかなか受け取らない私に痺れをきらしたであろう彼に「受け取って」と催促をされて私はやっとノートに手を伸ばした。



受け取ったそれには黄色い付箋が貼られていた。
書かれていた内容はあの謎の説明文である。



さきほどの会話をし、私にこのノートを託した彼は朝ご飯を食べ終え、いつものように洗面所の鏡の前で髪をセットして、いつも着ているグレーのスーツに身を包み、いつものように「行ってきます」と定型文を残して仕事へ向かって行った。



ノート以外は、全くといっていいほどいつも通りだった。






現在、昼の12時半過ぎ。洗い物や洗濯等、ひと通りの家事を終えリビングにあるお気に入りのネイビーのソファに座り、紅茶を飲み込んでひと息。



壁にかかったカレンダーにちらりと視線を向け赤丸を見つめる。




「ついに、今日だよ」




ぽつりと独白が溶けていく。今日は私が彼に気づいて欲しくてわざわざつけた赤丸の日だ。



視線を目の前のローテーブルへ移して、今度は目の前のそれと睨めっこをしてみる。