彼は一度ノートを読み終えると、私が指示した通りに文章の初めに戻って再び文字を読んでいく。



読み終えて、にこりと笑って唇を開いた。





“もちろん”

“よかった。最後まで読んだら最初に戻って文章の頭文字だけを読んで”

“え”






「ありがとう。僕と結婚してくれて、ありがとう」

「こちらこそありがとう」




ーーねぇ、今日がなんの日だか覚えてる?





大学ノートに貼られた付箋にはこう書かれていた。




【最後まで読んでくれましたか?


そもそも、君はこの付箋を見つけてくれたかな?


僕の書いたものがあまりにも取り止めなさすぎて、つまらなくて文学部のエースだった君は途中で読むのをやめてしまって、この付箋にも気づかないままノートを閉じているかもしれないね。


それはそれで仕方がないと思っています。


読んでほしいならちゃんと伝えろよってかんじだよね。


でも、気づかなければそれはそれでいいと思って書いたので僕はとくに気にしません。


実はこの物語はまだ完結していません。というかこれからも完結はしません。なぜなら、君と僕の思い出はまだまだこれからたくさん増えていくから。



まだ、序章にすぎないのです。



とりあえずもしこの付箋を見つけてくれているならノートの1ページめに戻って文章の頭の文字だけを繋げて読んでみてください。



全てはこれを伝えるための前置き的なものです。】