口下手で文学部の彼らしい不器用さにバカだなと思いつつ、やっぱり大好きだなと改めて思い知らされた。



イライラしていた自分がバカみたいだ。



“ご飯は食べて帰るからいらない”


“今日はお腹が空いていないからいらない”



最近の彼の不可解な行動を思い返して私は彼に渡された大学ノートを見る。本当に不器用だね。



仕事終わりに彼はこれを書いていたのだろう。きっとファミレスかどこかで。なにも言わずに、ご飯はいらないなんて簡易なメッセージだけ送ってきて。



「本当に、不器用だね」





ーー今日がなんの日だか覚えてる?




嬉しくて、彼の文字を読み返した。なんども、なんども。



ラブレターの中に隠された、ラブレターを。




さっき赤丸をつけるのに使ったペンを私は握った。
付箋の貼られた次のページを開き、私はそこに返事を綴った。