「だったら計画した方がいいんじゃないの?」
「たしかにそうだな。」


でもね、と話し始めた。


「無計画だからって理由では嫌いにはならない…かな」

そして山本は慌てて付け加えるように
「普通はだよ?」と言った。


丁度その時、山本の下車駅に近づいたことを知らせるアナウンスが車内に流れた。

すると山本は中吊り広告を見ながら何気なく言った。

けれどその言葉は電車のブレーキの音にかき消され聞くことはできなかった。

「え?」

「ううん」

聞き返す俺に笑顔で誤魔化すように山本は首を振ると

「もう降りなきゃ。じゃ、またね」

とさっぱりとした笑顔で、電車のドアが開くと同時に電車から降りていった。


俺は何気なく山本が見上げていた中吊り広告に視線を向けた。


今日公開する映画の宣伝だった。

この映画の予告を見たことがある。
確か電車が出てきていた、ドアの近くで本を読む女優の立ち姿が印象的だった。