「おい!聞いてるのか」
それにしても、
この電話相手と俺の境遇似すぎだっつーの。
俺に話しかけてないって分かっていても、
まるで話しかけられてるのを無視しているみたいだ。
人が電話している声を盗み聞きするつもりなんてない。
自分に言い聞かせ、再びスマホの画面に集中した。丁度テニス部の奴らの投稿が一斉に更新されていた。
へぇ、あいつらまたカラオケ行ったのか。
画面に夢中になりかけた時、ふと、近くで人の気配が留まっていることに気が付いた。
そっと視線をスマホから移すと男物の黒い靴がこちらを向いていた。
「お前だよ、聞いてんのか?」