俺は渡良瀬 健吾(わたらせ けんご)。こう見えて俺は、テニス部のエースで次期部長候補。部活ばかりの毎日を送ってきたが、そんな俺にもついに遅れた春がやって来た。
「健吾くん!部活お疲れさま!」

ふわふわの笑顔を俺に向ける、透明感満点のこの美少女こそが俺の彼女。同じ2年の笹原 愛美(ささはら あいみ)だ。
「ごめん、待たせたよな」
「ううん!全然っ待ってないよ!」
愛美と俺はいつも校門で部活終わりに待ち合わせをして、2人で帰っている。
途中にあるクレープ屋や、たこ焼き屋、コロッケのいい匂いも気にならないくらい(昨日2人で初めてクレープ買い食いしたぜ)毎日楽しく下校デート青春生活を送っている。
そんな、青春真っ盛りのリア充生活を満喫中の俺だが、ただ1つ大きな心配事がある。
「ねぇ?健吾くんもそう思うよね?」
「お、おお」

いけねえ、まただ。
「やったぁ!」

心配事とは彼女が美人すぎることだ。そのせいで、授業中も、部活中もずっと愛美が他の男に見られていないか心配で仕方ない。
時々俺も愛美の話も聞こえなくなるほどに、見とれてしまう。

訳もわからず答えると。
愛美はパァっと花が咲いたように嬉しそうにした。

愛美は例えるなら向日葵のような人だ。
笑顔でもそうじゃなくても、彼女は存在するだけでその場の人全員を惹きつける力を持っている。
きっとそう感じてるのは俺だけじゃない。
その証拠に、今も通りすがりの黒い帽子をかぶったジジイがすれ違いざま、俺の隣を歩く愛美に視線を向けるのを見つけてしまった。これだから、心配なんだ。