「ねぇ」
案の定、かすみは叱られた犬みたいな顔で俺を見ていた。


「何だよ」

「ごめんって。あの時は本当に悪いことしたなって思ってるよ?」

「もう怒ってねぇよ。昔の話だし。
あの時の発端はお前だったけど、結局俺も面倒になってたし。」

「でも」心配そうに口を開いたかすみにうんざりしながら俺は念を押した。


「今の彼女は一緒にいるだけで楽しいから大丈夫だって」
「そんなんだと、また振られちゃうよ?」

「なんで今そんな話になるんだよ。」
「なに。その態度、真剣に言ってるのに」

かすみこそ、すぐその態度だ。
してあげてるとか、言ってあげてるとか。
俺は別に頼んだつもりなんて微塵もないのに。


「お前、だから彼氏できないんだよ。
結構かわいいのにな」

いつもの軽口のつもりで言ったけれど、
かすみは面食らったような顔をしただけで何も答えなかった。