次の日のこと。空にはサンサンと太陽が登り、吹く風こそ冷たいものの雪の大半が氷と化していた。天気予報士のお姉さんは嬉しそうに随分と早い春の到来を喜んで、お母さんは昨日のままにされた手袋を卓上に残して家を出た。

家からあの場所まで、20分はかかるはずなのに。


見慣れた景色の中に白色が少ないことに焦って、小走りに急いだけれど。

いつものあの草原で、君の姿を見つけることは出来なかった。


「……っ」


春が来た。一足先に、春が。

冬を押しのけて、君の雪を溶かして

私の届かないところへと連れていった。


「明後日くらいって、言ったのに」


地面に混ざる灰色と、今まで隠れていた渋い緑色。

そして君の姿と重なる、白い色。


「足りないよ、……もう一回、」


冬は寒くて。なるべくなら外に出たくない。

冷たい空気が得意ではないから。


分厚い雲の影が差した空よりも太陽が出ていて明るい空である方が、見ていて気持ちがいい。

なんだか前向きになれる気がするから。


けれど、君がいるから。たとえ雪の中。冬の中。


その恩恵を受けて生きていることも忘れてしまって。太陽が占領している空だって嫌いになるよ。


「……早く、冬が来ないかなあ」


早く春を連れ去って。早く冬を連れてきて。


君がいない季節なんて、いくら温かくてもお休みが多くても。好きになれることなんてない。


早く、早く、今すぐにでも、

もう一度。また、君に会いたい。