「冬、終わっちゃうね」

「……終わっちゃうのかな」

「一週間もしたら雪は溶けてるよ」

「会えるの、一週間だけ?」

「……明後日頃には。晴れ空に太陽が登り出すみたい。もうそんなに会うことは無いかもね」


以前は春も、夏も、秋も。毎日のようにこの草原へと足を運んだ。飽きもなく、諦めが悪く、執念深く。

けれど、真っ白な君の姿を見かけることはなかった。


君は、ただ単に私がここに通っているだけだと思っているのかもしれない。もしかしたら、君に会いたくて苦手な低温の中に出向いていることを知っているかもしれない。


それほどまでに、君のことが私には分からないけれど……。

正解は後者。寒いのが苦手で、冬はなるべくお家を出たくなくて。それでも君に会いたいから、着膨れを気にしながらも厚着して、歩いて20分。毎日ここに通っているの。


そんなことを伝えたら君は笑うのかな。雪のように、今にも溶けて無くなりそうなその儚い笑顔を、また見せてくれるのかな。


「太陽も嫌い」

「うん、俺も」

「……眩しいから?」

「そうだね。……あと──」



未だに繋がれていた手を静かに離して、不意にその白い指先が私の頬に触れた。

冷え込んだ空気が露出された肌を刺していた中で、私の体温が移ったのか、その手はやけに暖かく感じて。


「君に会えなくなってしまうからね」

「……え、」


確かに、私と同じ熱を帯びていた。


「もう帰ろうかな」

「まって、」

「またね?」