来年も会いたいと願って。一年先だと妥協してしまっている自分をいくら情けないと感じても。


……君はいとも簡単に私と約束を交わしてくれる。去年も、一昨年も、その前の年も、もう一つ前の年も。

家からそう遠いわけでもないこの場所で、住所どころか、名前も、年齢も、連絡先も、なに一つ、全てを知らない君と毎年の冬を迎えて過ごす。


世間の当たり前ではない、私たちの当たり前。


雪が降らないと、冬が来た気がしないように。
私は君に会えないと、冬が来た気がしないの。


冬が、来ないの。



──春が来る。

君と私の嫌いな春が、太陽を連れて

冬と一緒に、君と雪を溶かしにやって来る。




「春、やだね」

「うん、なんとなく眩しいからね」



まだ、一つとさえ知ることが出来ていないのに。今年も、何も知らないままなのに。

住所も、名前も、年齢も、連絡先も。


「眩しいの、好きじゃないもんね」

「外に出るのは好きなんだけどね」


その容姿の理由(いみ)も、飽きもなく毎年ここにいる理由(わけ)も。


君が光を避けなければいけない都合も、全部、何も分からないままなのに。